KOHYEI PROJECT STORY
#02
合成樹脂事業部 合成ゴム・樹脂部 第4課
辰巳 連
KOHYEI PROJECT STORY #02
新入社員でありながら趣味の釣りを仕事に結びつけ、情熱的な行動力でメーカーのものづくりをサポートする、その驚きの経緯とは。
趣味は釣りでバスフィッシングなので、普段はルアーで魚を釣っています。このルアー(疑似餌)も一応樹脂製なので、仕事に生かせないかと思いつき、入社してすぐに釣りに関することをやりたいと上司に掛け合っていたんです。部長も釣りをするので、相談したところ「他部署の先輩もやっているぞ」と、たまたま大阪支店で釣り関係の仕事を手掛けたことのある化学品部署の先輩社員を紹介してもらいました。早速電話して「こういうのをやりたいです」と説明したら、「やってみたら?」と言われ、先輩がまだ当たっていないメーカーをリストアップしてもらって、入社2ヶ月ほどでしたので研修課題と並行し時間を見つけて、ひたすら新規の飛び込み電話をかけました。
知識などないので、先輩について行って聞いた言葉を見よう見まねで喋って、「こういうのできます」と言っていると、あるメーカーの社長さんが「一回話を聞いてみたい」ということになり、今、新しいルアーの開発をお手伝いさせていただいています。
柔らかいルアーは元々沈むのですが、これを浮かせたら面白いという話が出まして。理想的な形で浮かせるための処方が無いかということで紹介しています。メーカーさんでも、これまで他社の処方で試したけれど上手くいかなかったそうです。それこそ使っている樹脂に上手く処方できるのが大前提ですから。別の素材なら最近出た柔らかいルアーは浮くのですが、価格が高いのと、主流の柔らかいルアーと一緒にボックスなどに入れて保管してしまうと、溶けてしまうんです。試行錯誤しながらですね。やはり新しい物を作るのは簡単ではありません 。
実際、何度も水槽の中でテストして状態を確認したり、データを取ったり、魚目線でも釣り人目線でも考えないといけないのが逆に開発の面白いところだと思います。しかし、結局アイデアは、現場である釣場で釣りすることから見つかる気がします。今の釣りを楽しむことで、流行や時代の求めるルアーを肌で感じられますし、最終的に釣場で反応を示してくれるルアーが良いルアーだと思っています。
お客様の求める機能性と品質レベルを提供できているのは、弘栄貿易のなせる業ですね。柔らかいルアーに諸々処方して成形するのですが、どう上手く処方するかは企業秘密なので、教えてもらっていません。成形の段階で熱を加えるため、温度によって上手く処方できないとか、調整も難しいようです。ニーズにマッチする物があってこその新商品なので、開発が進むのは嬉しいですし、早く商品化されて欲しいと思います。実際市場に出たら、まず新しいので、釣り人が関心を持つのはもちろん、この姿勢で浮いた柔らかいルアーを魚が見たことがない。釣りをしていたら分かるのですが、この差って大きいんですよ。テスト段階は試作品で釣りをしていますが、釣れ方が違うらしいです。同じ色で姿勢の差だけで、ほぼ同じ場所で全く釣果が変わるとのことでした。やはり処方されているルアーの方が釣れると。魚に聞いてみないと分からないですけど、不思議ですよね(笑)。
バス釣りなんかでも、付ける重りが5g変わるだけで全然違いますし。釣りって深いんですよ。処方の有無でほんの少し色も違うんです。処方しているのがちょっと白くて。匂いも若干違います。変わりますからね、この差で。若干のルアーの硬さで水の受け方が違ったり。今後は樹脂や素材の勉強もしっかりして、刺さる提案が自分一人でもできるように実績を積みたいです。
弘栄貿易に入社して良かったのは、商社なので自社製品が無いから、はっきり言って何でも取り扱うことができるんですよ。環境的にも部長・課長・先輩がいて、サポートもしっかりしてくれて、なんでも売って良い、という感じ。結果だけ出せば自由に動いても良いという気風の中、本当に自由に動かせてもらっています。とはいえ、営業方法は「これを買ってください」と売り込むのではなく「何か困っていることありますか?」という、困りごとを聞くスタイルが他と違うところですね。例えば、成形メーカーで、上手く成形できないなどの困りごとがあれば、「こういう成形の仕方がありますよ」と、物だけでなく事・ノウハウを提供する。商品だけではなくて、そういうことも売れるのは弘栄貿易の強みだと思います。
今回も、処方できるものが上手く見つからないと困っているところで話が来て、先輩と相談して複数出したうちの1つが「これが今までで一番良い」と即採用となったので。それも、成形条件や成形時の温度などを踏まえて合うものを提供できたからです。やはり専門知識や知見がないとできないことなので。社内の各部門・各材料にスペシャリストがいて、とても心強いし頼りになります。あとは仕入先との繋がり。それこそサンプルが欲しい時に、仕入先によっては100kgからしか販売していない場合もあります。しかし試作で使うのは数キロなので「少しだけサンプルで……」とお願いしても関係性が無いと出してもらえないので。長年のお付き合いが物を言いますね。
個人的に大事にしているのは熱意ですね。例えばお客様に「こういうのができないか?」と聞かれたら、「一回持ち帰って確認しても良いですか」と答えます。訪問するたびに「こういうのを探している」「こんな形のものを成形してほしい」と言われるのですが、できないだろうなと思ってもとりあえず「無理です」とは言わない。釣り好きで、釣りを仕事にしたいと言っているので、あとはどれだけ一緒に取り組みたいという熱意が伝わるか。現状は釣り業界に足を踏み入れている程度なので、元々入り込んでいる商社や会社との差別化は自分の中で意識していました。商品で差別化しようと思っても、例えば、樹脂そのものの品質はそこまで変わらない。だからこそ人で売る。これは部長から教わりました。この商品を買うというよりは、「じゃあ辰巳から買おうか」と言ってもらえる営業マンになれと。
それが今回のような釣りの場合、自分の持っている知識や思いを語ったり、熱意もそうですし。お客様との距離感も、敬語でよそよそしい人もれば、逆にすごく近い人もいるので、近すぎず遠すぎず。あえてラフにいったり、「自分は新卒です」と言ったら相手も気軽に話してくれたりするので。今回の話も雑談から出て来た案件なんですよ。他にもこの前、大阪でフィッシングショーという釣りの展示会があり、そこでメーカーへ逆営業をして、釣りの話をする中で具体的な案件をいただくことができました。本当に好きとかやりたいという熱意って伝わると思うんです。今は結果を出して密かに「釣り事業部」を作るのが夢ですね(笑)。
合成樹脂事業部 合成ゴム・樹脂部 第4課:辰巳連
新卒入社1年目。土曜日は釣り、日曜日にサッカーに勤しむ。湖釣りに行くためだけに、会社から1時間半も離れた場所に家を借りるほどの大の釣り好き。