KOHYEI PROJECT STORY
#04
化学品事業部 基礎化学品部 第2課 兼 機能化学品部 第2課
石原 亮
KOHYEI PROJECT STORY #04
某高級家具メーカーのクッションに、業界初のバイオマス原料を用いて座り心地の良いソファを生み出すまで。そのチャレンジを追う。
ソファや椅子のクッションに使われるウレタンフォームというものがありまして、自社工場でソファを製造する高級家具メーカーに石油系のウレタン原料を納めるビジネスを5年前くらいに始めさせていただいて。2022年3月頃、いわゆるSDGsや環境負荷低減という流れがある中で、高級家具メーカーとしてもそういう風潮を受けて実際に取り組みをしていきたいというお話がありました。具体的にはバイオマスウレタンを使って製品を作りたいということで、石油系の原料の仕入れ先である三井化学と一緒に、作っていこうというところからスタートしたプロジェクトです。天然由来で100%石油系のものに比べるとCO2が減らせる。
まだ家具業界ではそういった素材を使用した商品は出ていない中で、業界に先駆けてトレンドを押さえたいと言いますか、お客様もリーディングカンパニーとして迅速に対応し開発に取り組みたいと思っておられました。そこで三井化学が持っているエコニコール®と呼ばれるバイオマスのウレタン原料、いわゆるひまし油をベースにしたポリウレタン用のポリオールと呼ばれる原料が元々ラインナップでありまして、これを組み込んで、今ある石油系の一部にバイオマスを付加して作ろうという方向で動き始めました。
商品を開発していく中で、課題は大きく分けて二つ。まずはスピード感。2番手3番手となるとインパクトに欠けてしまうので、いち早くブランディングやアピールにも使うために先手を打ちたい。あとは、同じ品質。原料が変わるとはいえ一定のレベル、快適性やフィット感などの座り心地は、従来の石油系の物と同じクオリティを担保するというのが課題になりました。原料を入れると物性というか、どうしてもその部分が変わってきますね。硬かったり、柔らかすぎたり、立ち上がりが戻ってこなかったり。メーカー側に知見があれば「こうしたら良いですよ」と助言もできますが、これから実績を積み重ねていくフェーズでしたので、一緒に模索しながらトライアルを繰り返し、かつ急がなければならない。そこがネックでしたね。同じ品質を安定して作り出すというのは至難の業で、こういうものができた、データが取れたとなったら現行品と比較して品質を近づける。利きソファみたいな実証もやりました。
どれがバイオで、どれが従来のものか、お客様に実際に座ってもらって、「わからないね」というところまで来てやっと。いけると思っても、お客様の方のセールスに渡すと「何か違う……」というのがあったり。あとはもちろん耐久性も大事で、長く使えるソファであることもベースにあり、そういった品質にも非常にこだわっていて、バイオマスという原料をいかに取り入れていけるか、かつスピード感を持ってというところでしたね。
仕事を進めていると、お客様と仕入れ先で思いが違うことが多々あります。値段ひとつとっても、安く買いたい・高く売りたい。仕入れ先は処方を変えずに何とか使いこなしてほしい、一方でお客様はこれだとおかしいから変えたい。同じ方向は向いているけれども立場が違えば言うことも違う。間に入っている我々にできることは、双方に寄り添いながら落とし所を見つける。客観的に物事を判断し、達成のためにはどちらが良いのかなど、状況や様子を注視しアンテナを張りながら吸い上げて、自分なりのコメントをすることで方向性を見出すというか。開発から価格交渉、納期調整に至るまで軋轢無く少しずつ両者の方向・ベクトルが合わさるようにしていましたね。
間に立つという意味では、我々が直接原料を販売して処方を組むことはできませんが、弘栄貿易はウレタンを切り口に他にもウレタンに関わる副資材を扱っている商社としての手数の多さがあります。ウレタン関連の溶剤や離型剤と呼ばれるものがあるのですが、例えばそれを環境に配慮した水系にしたり、紹介して実際に採用されたり。一品目だけの会話ではなく、商品と商品の間もつなぎながら、そういったことを交えた会話が増えるとお客様との関係も深まりますし。
弘栄貿易が大手メーカーの三井化学と直接取引ができているという、長年培ってきた実績と信頼。お客様からすると「三井化学」というと大企業イメージがあると思いますが、我々の会社規模で関係が築けているのは、お客様としても話しやすく、意見を通しやすい印象を持ってもらえるんじゃないかなと。これがお互い初めましてからだと、相手の様子もわからず、言いたいことも言えませんし、我々が窓口として上手く橋渡しできたのかなと思います。事実、サプライヤーとの関係性があったからこそ、このプロジェクトもスムーズに製品化までこぎつけられたと改めて感じました。また、社内的にも、元々話をもらったのが合成樹脂の部長で、ウレタンなら化学品だということですぐに来て。たまたま私がそこに座っていたので、高級家具の話があるのだけれど、というところからスタートしています。そういった意味でとても風通しが良く、社内で話がつながってそこで終わらなかったのはすごく嬉しいですね。意思決定が早いというのも良い点ですし、今回かなり自由にストレス無く要望を即決していったので、スピード感につながったと思います。
ウレタンという切り口だけでも部署で違い、搬送用のベルトやスマートフォンのケース、建材の接着剤や、おでんのパウチの中なども全部ウレタンなんですね。弘栄貿易自体もウレタンが家具で使われる取引はなかったのですが、今回実績ができたので、他に展開するために現在も同じチームで継続しています。ひとつずつ過去の知見を活かして新たな商談ができて、また次に繋がるというのも醍醐味ですし、部署の連携や意思疎通がしやすい環境が整っているのも強みだと認識しています。
仕事をする上で、何でも話してもらえるような関係づくりを目指していました。立場が違う様々な人がいることに関しては、調整役を意識しましたね。かと言って商社なので、出しゃばってもお互いプライドがあるので、そこは加減して黒子じゃないですが、気づいたら上手くいってるよね、というのがベスト。ミーティングも雰囲気を感じながら、発言ひとつ一つで何か修正できないか、第三者的に言っても差し支えないか、と考えていました。それもお客さまが本音である程度言ってくれないと成り立たないので、そこは丁寧にフォローをしようと思っていました。
きめ細かなコミュニケーションというか、メールも電話もそうですけど。小さなこともしっかりクリアにすることで、この人ならやってくれるんじゃないかという信頼に結びつき、本音が引き出せると思っているので。あまり「人」を見るというよりは「事(コト)」を見るというか。人を見るとどうしても偉い人の意見を聞かなきゃいけなくなってしまう。それよりも、そもそもの目的やゴールを振り返るようにはしていましたね。最終的にゴールが叶えばお互い一番良いので。我々はどこを目指してやっていたのか、たまに立ち止まって、そこから逆算してこうした方が良いというのを、自分なりに考えて言葉や行動で表していたと思います。
化学品事業部 基礎化学品部 第2課 兼 機能化学品部 第2課:石原亮
専門商社を経て2018年入社、化学品の営業ひとすじで、メインは基礎化学。キーワードはウレタンで、ウレタン樹脂原料、中間体の輸出入、またそれらに関わる副資材の取り扱いも。